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小児科医のコラム43 衝撃映像

コラム43 衝撃映像

私にも過去の忘れられない衝撃映像というものがある。幼少の頃のことである。教室の廊下に子どもの絵などの作品をはり出して展示することが行われた。その作業を私は手伝ったのであった。先生が椅子の上に乗って高い所に画びょうでとめてゆくのである。その椅子がぐらつかないように押さえる役割であった。木造の古い建物はガタが来ているし、椅子も木製でギシギシいうのだ。私はもう一人の子と相向かいになって椅子の両側にしゃがみ込んでしっかり押さえた。

先生がサンダルをぬいで椅子に登った。私は靴下をはいた先生の足元をじっと見つめた。先生が背伸びをした。なかなか貼れないのか。どうやら苦戦しているようだ。揺れないようにしなければ。私は様子が気になって見上げた。その瞬間だった。衝撃映像が飛び込んで来たのである。先生のスカートの中が丸見えだった。誤解してもらいたくないのだが、絶対に故意にではなかったのである。それだけははっきり断わっておきたい。私は一瞬で目をそらした。しかし、脳裏に焼きついてしまった。毛糸のズロース、しかもムラサキ色。見てはいけないものを見てしまった罪悪感。自分が何か淫らなことをしてしまったかのように感じた。当時の私には、ムラサキ色というものに何か淫猥なイメージを持っていたのである。まさか、こうなっていたとは…、普段の先生からはとても想像もつかない光景だった。

私は五十年近くの間、誰にも言わないようにしてきた。自分の罪を言いふらすことになる。だいいち不謹慎である。時々思い出しては気が咎めた。だけど、決して忘れることは出来なかったのである。今からでも遅くはないだろうか。先生、僕を許して下さい。ワザとじゃなかったんですから。